男性更年期障害・LOH症候群に対するテストステロンによる補充治療(泌尿器科)

女性の閉経前後にみられる更年期障害は、女性ホルモンの低下が原因です。男性にも、男性ホルモンの低下による男性更年期障害、LOH(「エル・オー・エイチ」と呼びます)症候群と呼ばれる病気があるのをご存じですか。
森之宮病院泌尿器科では、平成24年1月から男性更年期障害の専門外来を開設し、LOH症候群に対するテストステロンによる補充治療を行っております。

  1. LOH症候群とは
  2. テストステロン補充療法の実際
    1. 検査
    2. テストステロンデポー薬の投与量と投与間隔
    3. 治療の効果と投与期間
    4. テストステロン補充治療中の副作用と検査
  3. 初診からテストステロン補充療法までのながれ
  4. 治療実績
  5. 治療費用
  6. 保険適用のテストステロン補充治療薬
  7. 担当医師

1.LOH症候群とは

男性ホルモンは別にアンドロゲンとよばれ、精巣(睾丸)から分泌されるテストステロンが主なものです。

最近、男性更年期障害として、このテストステロンの低下が原因によるLOH(Late-Onset Hypogonadismの略)症候群が注目されるようになり、テストステロンによる補充治療を希望される患者さんも増えつつあります。

LOH症候群は、加齢男性性腺機能低下症候群とも呼ばれており、自律神経障害が主症状となっています。職場や身の回りにおきるストレスや過労、ビタミンなどの栄養不足に性格もかかわって自律神経のバランスが崩れ、気力低下や意欲減退、身体症状があらわれます。

働き盛りの40代から50代、そして定年退職を迎える60代前後に体の異常を自覚し、精神的な不調があらわれるようになります。その発症や程度には個人差があり、70代あるいは80代になって症状が顕著になる方もおられます。

2.テストステロン補充療法の実際

2-1.検査

初診時の検査として、下記の検査を行います。
診断は困難ですが、血中の「遊離(フリー)テストステロン」が11.8pg/ml以下に低下していることを一応の目安としています。

  1. 医師による問診と、「更年期障害に関する関谷式問診票」「国際勃起不全スコア」「国際前立腺症状スコア」などの問診票の記入
  2. 採血によるPSA検査と前立腺触診による前立腺癌のチェック
  3. 検尿、血液、生化学検査
  4. 遊離テストステロン、LH (黄体ホルモン)、プロラクチン、エストラジオール(E2)など採血によるホルモン学的な内分泌検査(※午前中に測定)
  5. 腹部CTあるいは超音波検査

2-2.テストステロンデポー薬の投与量と投与間隔

治療に使用するテストステロンは、二次性徴をもたらすだけでなく、脳に作用を及ぼします。自律神経と内分泌機能の中枢としての働きと関連する視床下部をはじめ、扁桃体、海馬、線条体、認知や記憶に関係する大脳皮質などに作用します。脳以外にも筋や腎臓、骨髄、皮膚、肝臓、男性生殖器、骨などに影響を与えます。

日本では、テストステロン補充療法に筋肉注射としてテストステロンデポーが用いられています。私の場合、初回に1回125mgの注射剤を2分の1アンプル、肩上腕三角筋部の筋肉内に投与します。2回目からは、2週毎に1回125mgの注射剤を1アンプル投与します。3回目以後は症状をみながら増減します。

ほかの注射薬として、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)があります。後者は、挙児希望のある方やテストステロンデポー薬が適さないときの代替えとして用いられています。投与量は1回3000単位の2分の1から始め同様に筋肉内に投与します。

2-3.治療の効果と投与期間

表は、テストステロン補充療法によって改善がみられる自覚症状です。自律神経に関連する症状が主で、同時に複数の症状がみられるのが特徴です。
図に示した通り、治療経過は必ずしも直線的に良くなりません。次のテストステロンを投与するまでの2週間の中も症状の改善程度に「波」がみられることがありますが、心配はいりません。

平成15年(2003年)から私が行ってきた治療データによると、投与後3、4カ月目頃には改善がみられ、1年ぐらいで元気なときの5割から9割までのレベルに回復します。生活の意欲が向上し、元気になり、表情も見違えるように良くなられます。
約半数の方が、2年以内に治療が不必要になっておられます。
中には、「調子が良いから」と、4、5週毎の投与を継続される方もおられます。

患者さんによっては、テストステロン補充療法によって症状が満足できる程度にまで改善しない場合もあります。その時には違う種類の内服薬を併用することで症状の改善を図ります。

(表)テストステロン補充療法により改善する自覚症状

ふらつく

尿のことが気になる

眠りが浅い

イライラする

夜トイレにおきる

記憶力が低下している

朝が起きづらい

何をするのもおっくうである

朝の勃起がみられない

首筋から肩の凝りがある

手足が冷たい

筋力が低下した

ほてる・発汗する

耳鳴りが持続する

疲れやすい

頭痛の発作がおきる

 

(図)テストステロン補充療法による改善経過例

2-4.テストステロン補充治療中の副作用と検査

テストステロンの補充によって、まれではありますが副作用がみられることがあります。
治療期間中にみられる副作用としては、テストステロン自身の作用と関連したものと、テストステロン注射薬に起因するものがあります。
前者の場合は、造血能が亢進し、多血症となります。ヘモグロビン値が上昇します。大変少ないですが、前立腺がんが顕在化したり、まれに肝臓のがんが増大したりすることがあります。
後者では、肘、肩、背中、腹部にマッチ棒の頭より小さいか、同じサイズの「にきび」様の皮疹、かゆみがみられます。きわめてまれですが、舌や喉のしびれ感があらわれることもあります。

副作用がある場合は、尿中の蛋白尿、潜血陽性、円柱、軽度の血清クレアチニン値の上昇など、尿検査や血液検査に変化があらわる場合があります。
診察時の問診と皮膚の変化、検尿、血液、生化学検査で、副作用が出ていないかどうかのチェックを行います。負担が少ない検尿は毎回、実施しています。
前立腺がんなどのチェックも必要です。PSA検査は治療前と治療後に3カ月毎、1年過ぎれば6カ月毎に検査を行います。肝臓のチェックを含めた腹部の超音波検査(あるいは単純CT、MRIなど)は年1回実施します。

3.初診からテストステロン補充療法までのながれ

初めて診察を希望される方は電話での診察の予約をお願いしています。

最初の診察では、「2-1.検査」に説明しましたように問診、診察と検査を行い、治療方法の説明まで行います。次回の診察の予約を行いますがテストステロンなどのホルモン学的な内分泌検査の結果が出る5日から7日後に再診となります。

テストステロン補充療法の開始は、適応ありと考えられた場合に再診のときから開始となります。

4.治療実績

平成24年1月の開設以来、森之宮病院の男性更年期障害外来で、テストステロン補充療法を行った患者数は年ごとに増えています。
多くの患者さんが「体調不良の改善がみられつつある」と自覚され、治療を継続されています。

5.治療費用

当科では、保険診療による診察を行っています。

6.保険適用のテストステロン補充治療薬について

日本では、高用量の投与が可能で副作用の少ない注射剤が、テストステロン補充療法に用いられています。
米国やカナダ、ヨーロッパ、近隣のアジア諸国では、注射薬、内服薬、湿布薬の3種類が普及しています。
日本でも、厚労省の認可を得たI類医薬品の軟膏と内服薬を、薬局において自費で購入することが可能ですが、軟膏は用量が低いものしかなく、内服剤も肝障害の可能性のある成分を含むものしかありません。
注射薬にアレルギーがみられる患者さんの場合、治療の機会が失われているのが現状です。わが国においても、1日でも早く3種類すべての医薬品が普及することが待ち望まれています。

7.担当医師

平成15年から男性更年期障害の診療を行っている石橋道男医師が担当します。
 

 

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